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黒猫

「あ、ご飯もってきてくれたの?
やっぱり体内時計狂っちゃったのかなぁ
まったくおなか減らないやぁ」

由梨は、白犬の本陣でもそう笑った。
手足はバッキバッキに折られて、
薬を何度も打たれても、自我を失う事もなく、笑った。

でも、体にはガタが来てるらしい。
笑いはぎこちなく、目を開けることもままならず、ただ、笑うことしか出来ない。

「誰がてめぇにメシなんて持って来るかよ!
早くくたばりやがれ!」

白犬軍は逆に恐怖した。
記憶を失わせようと何度も薬を盛ったのに、自我さえ失わない黒猫に恐怖したのだ。

「ねぇ、今面白いことある?
私ね、もう痛みも感じないんだぁ」

いくら痛めつけても、動じない黒猫。
そんな黒猫が怖くて怖くてたまらなかった。

「ねぇ…」
.
.
.
.
.
.
.
由梨としての最期を見た人はいない。

でも確かなのは、最期まであの自我を維持したであろうという事だ。

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