小説の気まぐれ読みきり

カキ氷

山ほどカキ氷を作って、
シロップも何もかけずただ貪った。

頭が途中でキーンっとして、
何もかも思考が破棄できそうな予感がした。

冷たいもの食べまくって気絶しそうになった時に、
悩みの種が声をかけた。

「甘いものばかり食べていてはダメですよ?」

キンキンに冷たくなったスプーンを口からはずそうとするが、
ベロに引っ付いて取れない。

しかたがないので女の方をぼんやりと眺めた。

「うるへー、ひゃとうもひゃんもひゃひゃってねぇよ」

もはや、自分でも何を言ってるかわからない。
女はクスリと笑うと、新しく皿を出し、
まだ大量に残ってる氷の削った奴を乗せた。

「私も、いただきますね」

凄く色っぽい。
顔というより、しぐさの問題だが、色っぽい。

女は砂糖を少しかけると、
それまた小さな自分の口に合うスプーンを用意し
少しずつ口に運んだ。

スプーンが小さすぎて、口に運ぶまでに殆どとけてしまう。

「美味しいですね」

さっきから俺は何もしゃべっていない。
舌が痛いのもあるし、何しゃべっていいかもわからない。

嫌いだ。こんな女。

「熱でもあるんですか?」

女が、俺の額に手を当てる。

「ちべたい…」

熱は平常どおりの熱だが、
女の手にはさっきまでカキ氷が握られていた。

「やっと、しゃべってくれましたね」

女は嬉しそうに笑った。

あんたが一方的に俺を好きでも、お前の事を俺は嫌いだ。
そう言うつもりだったのに、言葉が途切れた。

許婚というものは、どうにも面倒だ。
嫁は嫁ぐもので、夫の道具。

そんなのは嫌だけれども、時代が時代だ。

時間がたち過ぎてとけたり、固まったりした氷を口に運ぶ。
いくら物理的に体をさました所で、
冷静な考えなんて出来やしない。

結局、自分の心を失っているのに過ぎないのだろう。

この世界でまともという言葉は存在しない。
まともがまず何かなんてわかりやしない。

いくら冷静になろうとも、答えの無いものは、
作るしか答えが出ないのだから。

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もし犬猫星理論の奴らが学生だったら

放課後座談会

白「なんですかこのふざけた企画は」

由梨「わー!学生服なんて始めて着るー!」

白「ゆ、由梨様!?(鼻血が出てくるのを左手で抑える)
ああ、素敵です。それは『不良』ファッションというのですよ」

由梨「ふりょー?ああ、あれね。
じゃあ、早速(こぶしを構える)」

真琴「おいおい、黒猫さんよ。
不良ってのは格好だけにしといた方がいいぜ」

白「真琴!由梨様を侮辱するな!(斬りかかる)」

真琴「ちょ、ちょい待てェェェ!カッターナイフとかまじ生々しいから!
そういうことは本編で頼むから!」

紅蓮「おいおいテメェ等、俺を差し置いて話し進めるとはいい度胸だなァ
ククッ、黒猫。あんたにはお仕置きが必要みてェだなァ?」

由梨「誰?」

白「ここでの設定はライバル校である『白犬高校』のなんか不良らしいです
付き合ってる人はその辺のおばさんで」

由梨「なんかって微妙ねぇ」

紅蓮「おィィィ!?恋人設定おかしくねェ!?」

白「当たり前です。私の黒猫様とつき合わせてたまるものですか」

涙「あの…本編設定はもう少し捨てる感じで…」

蜜柑「そう…し…ないと…、私、出れな…い
だっ…て、本…編じゃ絡…み、ないから」

由梨「誰?」

白「えっと、彼女の設定は…」

紅蓮「先に進まねぇだろうがァァァァァ!」

というわけで、学生にしてみた。
すると、紅蓮が突っ込みだという事が判明。
真琴は突っ込みでも逃げ突っ込みだからなぁ(何の属性!?

あ、確実に影響されてますよ。
銀八先生っていう本買って来たんで

本当は黒執事が発売してないか見に行ったんですけどね。
8月まで待つか…

しかも由梨が不良で、白が側近みたいな感じ。
いや、似合ってるけどね。

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絶望の人

「珍しいですね、姉さまがそんなに弱気だなんて」

由梨はさらわれる数日前に、弱気な言葉を残した。
その言葉は覚えていないが、いつも強気な由梨なだけに白は不安がった。

「杞憂ですよ。きっと、お疲れなんです」

白はそういって由梨を慰めた。
由梨がここまで怖がるのを始めてみた気がする。

杞憂___この言葉は白が自分に言い聞かせて来た言葉と言えなくもない。

戦況は悪化し、両軍ともに資源は尽き果てて、
神は雨を降らせなくなった。

「こりゃ、本当に死ぬかもな」

朱雀は窓の外の干からびた大地を見て答えた。
もうこの大地には何もかも実らない。

「戦争をやめれば、黒猫は食われる。
戦争をやめなければ黒猫も白犬も壊れる」

由梨はそういい残し、部屋を去った。

その三日後、由梨はいなくなった。

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黒猫

「あ、ご飯もってきてくれたの?
やっぱり体内時計狂っちゃったのかなぁ
まったくおなか減らないやぁ」

由梨は、白犬の本陣でもそう笑った。
手足はバッキバッキに折られて、
薬を何度も打たれても、自我を失う事もなく、笑った。

でも、体にはガタが来てるらしい。
笑いはぎこちなく、目を開けることもままならず、ただ、笑うことしか出来ない。

「誰がてめぇにメシなんて持って来るかよ!
早くくたばりやがれ!」

白犬軍は逆に恐怖した。
記憶を失わせようと何度も薬を盛ったのに、自我さえ失わない黒猫に恐怖したのだ。

「ねぇ、今面白いことある?
私ね、もう痛みも感じないんだぁ」

いくら痛めつけても、動じない黒猫。
そんな黒猫が怖くて怖くてたまらなかった。

「ねぇ…」
.
.
.
.
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.
.
由梨としての最期を見た人はいない。

でも確かなのは、最期まであの自我を維持したであろうという事だ。

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その名は

「だーかーらー!黒猫さん。
ここは子供もいるんだからそういう雑誌は控えてくださいよ」

戦争が始まってからも、少しの間は平和だった。
黒猫軍の中には老若男女、すべての人々が集まっていた。

自由な思想。人を守る思想。

そんな思想を持った由梨が黒猫となって、乱世を駆けた。

それはまだ、黒猫『篠原由梨』が生きてる頃の話______

「別にこれ、子供が読んでも大丈夫じゃないの?
大体これ、白が買ってきたんだよ?」

由梨が手にしてるのは『一から始める子供の拷問書』という物だった。

「子供ってついてるし、大丈夫じゃない?」

黒猫は気楽で、自由で、何にも縛られない生き方を選んだ。
本来は戦争なんて好まなかっただろう、でも、戦う事を拒まなかった。
由梨には間違いなく戦いの血が流れているのだろう。
戦うときに、元々猫のような瞳は、ことさらに丸くなった。

「はい、白。
面白かったよ」

そう言うと、さっき持っていた如何わしい書籍を白の手に渡した。

「狂、私はねぇ、革命だかなんだかして世界をうるさくしようとは思わないの。
だからってうるさい世界もきらいじゃない。そのうるさい世界の合間をぬって歩くのが私達猫だもの」

狂とは、さっき黒猫に本のことで注意した青年である。
由梨は、皆を平等に気に入っていた。

「みんな、私より早く死ぬんじゃないよ」

若い黒猫、その名は『篠原由梨』

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