黒書物語

第一話 ミチュア・フライ

暗い暗い地下室の中、
小さい頃、よく閉じ込められた記憶がある。

姉上と二人で庭の柿を取ったりだとか、
犬にいたずらしたりだとかでよく閉じ込められた。

そんな子供の頃から10年たった。

「おなか減ったねぇ」

なんでいまだに地下室に閉じ込められてるんですか。
もう16歳でしょ?姉上。

「姉上が悪いんですよ
夕食をつまみ食いされたら怒りますって」

僕は二歳年下でも、正直姉上よりはしっかりしてると思う。
姉上は奇妙で(僕も人のことは言えないが)、
何言ってるかわからなくて(僕も専門用語とかしゃべりすぎだけど)
その上、生まれる前の去が見えるらしい。

「そういえば、私の名前なんだっけ」

そして、よく記憶を落とす。
無くしてるよりも落とすと言った方がそれはもうぴったりな形で

「アイリスですよ。
僕はロー」

そう言うと、姉上は不機嫌な顔になった。
自分の聞いていない事を言われたからだ。

「アイリス。
じゃない、ミチュア・フライ」

何か独り言を言った。
『ミチュア・フライ』は姉上が覚えているずいぶん前の魂の持ち主らしい。
彼女に関する事なら何でも話せる。
それはもう、自分の事以上に覚えている。

僕は、ペンを拾って真っ黒な本を取り出した。
蝋燭の蜀台を指に突き刺して血を流す。

その血をペンにとると、黒い本に姉上の言動を書き始めた。

『BOOKMAN』、それが僕の職業。
異形の記録を書き連ねる、嫌な職業。

姉上を異形と呼ぶのは嫌でも、異形にしか見えない。

もうすぐ、姉上が夕食を盗み食いした罪も許される時刻だろう。
本を閉じると、ため息をつき姉上を見る。

アイリスに戻っている。僕はアイリス姉上の方が好きだ。

カンカンと鍋を鳴らす音が聞こえる。
夕飯が出来たのと同時に外に出される。

夕食の匂いに、体が反応して生理的に音がなる。
アイリス姉上は、手掴みで食べている。

「本、お返しします」

現BOOLMANに本を返す。
いつかは、あの重苦しい制服も受けつぐんだろう。

とりあえずは、夕食を食べよう。
明日がどうなるかは知らないから。

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